ネットでの炎上、不謹慎狩り、不倫叩き、マスク警察、ハラスメント…。
「許せない」感情の暴走を私たちは日々目にしますが、その感情が起こるメカニズムを解く鍵は「脳の構造」にあります。
人の脳は、裏切り者や、社会のルールから外れた人といった、わかりやすい攻撃対象を見つけ、罰することに快感を覚えるようにできています。他人に「正義の制裁」を加えると、脳の快楽中枢が刺激され、快楽物質であるドーパミンが放出されます。この快楽にはまってしまうと簡単には抜け出せなくなってしまい、罰する対象を常に探し求め、決して人を許せないようになるのです。
本書では、上記のような正義を振り翳す、正義に溺れてしまった中毒状態、「正義中毒」と呼んでいます。
これは、脳に備わっている仕組みであるため、誰しもが陥ってしまう可能性があると中野さんはいいます。
自分や自分の周りの人が被害を被るわけでもないのに、特にネット上では他人への批判やバッシングが溢れてます。
上司や、先輩、取引先のお客様に腹が立つことがあっても、今後のことを考えれば直接罵ったりはしないですよね。しかし、インターネット社会の出現、とりわけSNSの普及で、誰もが自由に情報発信できるようになりました。同時に自由な感情の吐露、とりわけ他人の攻撃もしやすくなったといえます。
そもそも人間の脳は対立するようにできているのです。心理学ではイングループバイアスと言うのですが、自分が所属しているグループに対しては甘く、アウトグループ、つまり自分が所属していないグループに対しては厳しいことを指します。ネット社会では、アウトグループが、自分以外の全てまで拡張され、自分以外のものが攻撃対象になってしまうのです。
ではどうしたら自分を客観視して、正義中毒を抑制することができるのでしょう?
怒りの感情が湧いたときは、その感情を増幅させてしまう前に一呼吸おいて、「自分は今中毒症状が強くなってきているな」と判断するようにします。
「許せない」と思う感情は誰にでもあり、それをコントールするのが大事なのです。
僕の周りにもメール攻撃をしてくる人、他人の批判ばかり言う人、体制について文句ばかり言う人がたくさんいます。そして自分も同じような行動を取ってしまっていることもあります。
アウトグループの「正義中毒」は、他人に構っていられるほど「ヒマ」があってよござんすね、くらいに捉えておいて、やり過ごすのが得策でしょう。
では、ごきげんよう。